神棚と榊
神棚に榊が飾られている風景を目にする機会があります。
榊の葉の緑色は白木造りの神棚によく映えます。
この榊は日本古来より神様と深い関わりを持つ植物と考えられてきました。
神棚に榊が飾られるのもその由縁といえるでしょう。
「榊」の語源
「榊」は暖かい地方の山林に自生するツバキ科の常緑樹です。
神社で行われる神事には欠かすことのできないものであり、また神棚に飾る木であることで知られています。
榊は字の形からも読み取れますが神様との関わりの強い木であると古くから考えられてきました。
榊の語源についてはさまざまな説があり、神様の住む聖域と人が暮らす世界との境を示すための「堺木」が元になっているとの説や、「栄木」もしくは神聖な木という意味を持つ「賢木(さかき)」が元になっているという説などです。
榊は暖かい地方の植物であるため北の地方では生育しないため、榊が手に入りにくい地方では同じ常緑樹である杉や樅(もみ)、樫(かし)などを代用しているようです。
一年を通して緑の葉を保っている常緑樹は、神様から私たちへの尽きることのない恵みであるとともに、人々の繁栄をという願いが込められたものだったのです。
榊と日本神話
前述でも軽く触れましたが、榊と神様、神社神道とはとても密接な関わりを持っています。
古事記や日本書紀で知られる日本の神話の中でも榊は要所要所で登場しています。
中でも代表的な神話としては「天の岩戸」があります。
天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸にお隠れになったせいで真っ暗になってしまった世界に光を取り戻すため、天細女命(あまのうずめのみこと)が天の岩戸の前に榊を立て面白おかしく踊ったという神話です。
神話だけでなく神社の神事において榊は神前に捧げる玉串として用いられたり、神様の宿る依代(よりしろ)として用いられたりもします。
また巫女などが舞う神楽舞でも榊を手に持つ舞が全国で数多く見られます。
神楽舞というのもそもそもは神様に奉納するものですので、これらのことを考えても神様をおまつりするのに榊は欠かせないものであるということが理解できるのではないでしょうか。
神棚への榊の飾り方
神棚に榊を飾ることについても、神棚が神様をおまつりしている神聖な場所であることを示すという意味を持っています。
榊の飾りかたは神棚の手前に左右それぞれ二ヶ所飾ります。
毎月一日と一五日に新しいものに替えるのが一般的のようです。
もし一日か十五日を待たずに枯れてしまった場合には、枯れたままの榊を飾っておくのは失礼なので新しくしましょう。
榊は榊立てにさして飾りますが生花の場合はこまめに水を替えるようにし、緑を絶やさないようにします。
最近は手入れの手間がいらない光触媒などの造花の榊も多く出回っており、生花の榊ではなく造花の榊を飾る家庭も増えてきているようです。
本来は生花の榊を飾るのが習わしでしたが、特に決まりではないので自分の生活スタイルに合うように選んだらよいと思われます。